「住まいの絵本館」と「希望の壁」見学会のご報告

 まだ夏の日差しが残る陽気の中、今年度の見学会がおこなわれました。小型バスをチャーターしての快適な移動で、関連団体(関西インテリアプランナー協会)からの参加者も加わり、有意義なものとなりました。

 最初の見学先である「住まいの絵本館」(以下、絵本館)は、元インテリア学会関西支部長・大阪市立大学名誉教授の北浦かほる先生が設立され理事を務められているNPO法人「子どもと住文化研究センター」の活動拠点として、先生自身が私費を投じ設計もされた建物です。

 大阪・北千里の閑静な住宅街の一角にあり、敷地の高低差がその室内で巧みに扱われていました。エントランスと一体になった多目的コーナーからは、見晴らしの良い明るい庭が見渡せます。隣接する図書コーナーは、床レベルが数段低くなっているため、部屋の三方に天井近くまで充分に設けられた壁面書架の圧迫感が感じられません。上部のハイサイドライトで明るくありながら、本の場にふさわしい落ち着いた空間となっていました。今は空いている上部の棚が現在も増加中であるという絵本で埋まっていく光景を想像するのもまた楽しい空間であると感じられました。

 参加者は到着後、北浦先生より絵本館開館の趣旨・活動の内容・蔵書の紹介などの説明を受けた後、NPO法人メンバーの方から、絵本館流子どもへの絵本読み聞かせ(ただ読むだけでなく、その物語の中の住空間に関するコトが同事に語られる)の実演や、最近の活動の詳細を聞きました。住空間に関する絵本自体の数や種類の多さ、幼い子どもに与えられるイマジネーションの大事さに気づかされるとともに、それをこれまでの研究をもとに広く伝えようと尽力されている北浦先生と法人メンバーの皆さんの活動にあらためて感服しました。

 その後、梅田スカイビルの敷地内に建設された「希望の壁」に移動しました。積水ハウスの方から建設の経緯や植えられた植物・メンテナンスなど詳しい説明を受けました。実際の植物の植えられ方や構造などを間近に見ることができ、巨大な緑の壁が間近にある空間体験をする貴重な機会となりました。さらに隣接する「新・里山」も合わせて見学し、植生などの説明を受けました。巨大超高層ビルの足もとに設けられた植物は「緑化」された人工物からどのような「自然」となり得ることができるのかについて考えさせられる機会となりました。

 最後はさらにバスにて湊町リバープレイスへ移動。夏の様な日中から一転、夕刻には気持ちのよい風の感じられる季節にふさわしいルーフテラスにあるリバーカフェにて、楽しく見学会を締めくくりました。  

記:矢部 仁見

03「住まいの絵本館」読み聞かせ体験

03「住まいの絵本館」見学

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02「希望の壁」見学